在宅で大活躍! 皮下投与 - 全国在宅医療マネジメント協会

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在宅で大活躍! 皮下投与

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①なぜ在宅では皮下投与?

在宅で皮下投与が重宝されるのは、医療者が常にそばにいない環境でも静脈投与より安全な方法だからです。

在宅で皮下投与がよく用いられる理由について、順番に見ていきましょう。

訪問看護で皮下投与はよく使用される

皮下投与のメリット

事故/自己抜去しても安全

  • 生活をしながら点滴をする
  • 医療者の見守りがない環境で点滴をする
  • 高齢者・認知症がある方に点滴をする

といった在宅領域ならではの環境では、事故抜去・自己抜去のリスクが高い上にトラブル時の対応が即座にできないという問題があります。

皮下投与の場合、誤って抜けてしまっても輸液や薬剤が投与できないだけですが、静脈投与の場合には自己抜針による出血や汚染もリスクとなります。

静脈ルートの確保をしなくていい

静脈投与の場合、当然ですが針を血管内に留置する必要があります。血管内に留置できずに失敗してやり直す、留置できたとしても途中で抜針し血管外に薬液がもれてしまうといったトラブルがおこる可能性があります。

皮下投与の場合には穿刺手技による失敗はないため、何度も穿刺されるという患者さん側の負担がありません。

皮下投与のデメリット

皮下投与にはデメリットもあります。

  • 静脈投与に比べて効果発現に時間がかかる
  • 輸液量・速度に制限がある
  • 投与できる薬剤に制限がある
  • 浮腫があると吸収しにくい
  • 人によっては痛みを伴う
  • 皮膚障害が発生することがある

病院においては、効果発現に時間がかかる、輸液量・速度の制限、薬剤が皮下投与に適していないため、皮下投与の場面は限定的になりますが、在宅においてはデメリットよりメリットが大きいためよく使われる方法になっています。

②皮下投与の種類

皮下投与には皮下注射皮下点滴持続皮下注射があります。

皮下注射

皮下投与と言えば皮下注射ですね。皮下注射は場所を問わずに行える手技であり、在宅でもよく行います。

代表的なのはインスリン製剤ですが、在宅では腎性貧血に対してのダルベポエチンアルファ、プラリアなど骨粗鬆症治療薬、骨転移の治療に使用するランマークなどの投与も行います。

製剤ごとにシリンジ(針なし)、針一体型のシリンジ、バイアルなど形態が異なるので、準備する物品に注意が必要です。

皮下注射について

皮下点滴

その名のごとく皮下に点滴をします

皮下輸液の特徴はゆっくり吸収されることです。

行う目的は輸液と薬剤投与があります。皮下投与の中でも病棟ではもっとも実施しないのが皮下点滴であり、在宅で指示されてもっとも戸惑う手技ではないでしょうか。

皮下点滴について

持続皮下注射

ポンプを使用して持続的に微量の薬剤を投与する方法です。

疼痛コントロールなどを目的として、病院でも緩和ケア病棟ではよく行われています。

PCAポンプなど在宅用のポンプがあり、医療機関によって扱っているポンプが異なるので、訪問看護師はそれぞれの使用方法を理解しておく必要があります。

PCAポンプなどの持続皮下注射について

③皮下点滴とは

皮下点滴に用いる輸液

生理食塩液、1号液、3号液。1か所から1日に500mL程度まで。

皮下点滴に用いる薬剤

抗菌薬としてセフトリアキソンナトリウム(1日1回投与でよい。在宅で頻度の高い呼吸器感染症や尿路感染症にも効果がある)、ベタメタゾン、フロセミド、メトクロプラミド、ハロペリドール、ブチルスコポラミンなど。生食50mLに溶解して30分~1時間程度で投与することが多いです。

方法

穿刺部位は主に腹部大腿部となります。

気胸に注意して前胸部、流量が少ない場合には上腕も選択肢に入ります。ADLや認知症の有無、せん妄などの状況に応じて、体動の邪魔にならず、事故抜去のリスクが低い位置を選定しましょう。

準備するものは静脈投与と同じです。

留置針を根元まで穿刺すること、在宅の患者さんはるい痩が強く、皮下脂肪が少ない方が多いため、10~30度で穿刺します。また、静脈穿刺のように逆血を確認して血管内に外筒をすすめるのではなく、皮下組織内に針を根元まですすめてから外筒を残して針を抜きます。

④持続皮下注射とは

持続皮下注射の目的は、主に疼痛緩和のためのオピオイド投与、悪性消化管閉塞時に対するオクトレオチドの投与、鎮静です。内服ではコントロール不良な場合や、内服自体が難しい場合に用いることが多いです。

疼痛緩和に用いる薬剤
ブプレノルフィン、モルヒネ塩酸塩、オキシコドン、フェンタニル、ヒドロモルフォン

悪性消化管閉塞
オクトレオチド

鎮静
ミダゾラム

穿刺部位は皮下点滴と同様ですが、薬液投与量が微量なため皮下点滴に比べ、上腕もよく選択されます。

持続皮下注射にはポンプを使用します。大きくわけるとディスポーザブルポンプと電動式ポンプがあり、どちらにもPCA機能があります。

ディスポーザブルポンプ

バルーンや大気圧による収縮圧力により薬液を投与します。

シュアーフューザー®Aやアキュフューザーなどがあります。

メリット
電源不要、動作音がない、軽量ことです。

デメリット
流量の精密さが電動式に劣る、流量やドーズ量、ロックアウトタイムの調整ができないことなどです。

電動式ポンプ

電池やACアダプタで駆動します。

テルフュージョン小型シリンジポンプ、スミスメディカルのCADDシリーズ、クーデックのエイミーPCAなどがあります。

メリット
流量を精密に投与できる、流量・ドーズ量・ロックアウトタイムを細かく設定できる、製品によってはドーズ履歴が記録される機能もあるところです。

デメリット
在宅用として軽量化されてはいるもののポンプ自体の重量がある、ACアダプタによる充電や電池交換が必要、移動時にACアダプタの抜き差しが必要になるところです。

さいごに

皮下点滴や持続皮下注射は在宅で初めて実践する方も多いですが、在宅においては貴重な薬剤投与方法の1つになっています。

皮下投与の活用は在宅療養している方にとってメリットが大きいため、それぞれの皮下投与の目的や方法を理解して自信を持って実践できるようにしましょう。

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