終末期患者・家族へのケア
安心して最期を迎えられるための在宅看護ケア
在宅看取りを行うためには「苦痛緩和、心地良いケア、家族へのサポート」の3つが大切です。今回は、在宅での看取りの看護にあたる際のポイントについてお伝えします。
苦痛の緩和
苦しくない、痛くない、つらさを緩和する
在宅では、病院と違い医療者の訪問には限界があります。訪問看護は1日のうちのたった数時間のかかわりであり、その他の時間は家族の対応、もしくは独居の場合は1人で過ごされるかもしれません。
そのため、本人の苦痛の緩和を最優先に考えます。疾患に関わらず、「何が一番つらいのか」を様々な側面からアセスメントし、捉えるのが重要です。
「つらさ」と一言で言っても、何がつらいのかによって分類されます。例えば、次のようなものがあります。
- 身体的な苦痛
呼吸苦や痛み
- 精神的苦痛
動けなくなること、自分の役割が果たせなくなることへのつらさなど
- スピリチュアルな苦痛
これらの苦痛は、薬剤の使用でコントロールできるものか、誰かに吐き出すことで楽になるのか、環境調整やちょっとした工夫で軽減できるのかを考えます。
痛みを訴える患者には積極的に薬剤使用を勧めますが、痛みを増強している因子があるのかどうかをあわせて観察します。
実際にはどのように観察するか
実際にはどのように観察すれば良いのでしょうか。ある事例を紹介します。
家族の不在時に痛み止めを多く使用していた方に対し、1人になる時間に訪問し傾聴したり、痛み止めと一緒に抗不安薬を低用量で使用したりするなどの対応を行うことで、痛み止めの使用回数が3分の1以下になったそうです。
生活習慣や人となりを知っていくことが症状緩和のヒントになるかもしれません。
心地良いケア
終末期患者では、だんだんと自分で出来ないことが増えます。とくに、保清や排泄は他者に委ねる場合が多くなります。我慢することなく排泄ができ、体の清潔が保たれれば誰でも気持ち良く過ごせると思います。
寝たきりになった場合には、訪問入浴サービスを利用することもできます。
また床上でも清拭だけでなく、洗髪・手浴・足浴・陰部洗浄・口腔ケアなどを積極的に行います。
中でも手浴は、家族と一緒に行うと喜ばれることが多く、手浴の後に香り付きのハンドクリームで手のマッサージをすることで癒されることもあります。
家族へのサポート
お別れの前の心の準備をサポートする
患者本人だけでなく、近くで看ている家族も「これからどうなっていくのか」という不安を抱えています。よって、終末期においては家族へのケアも行わなければいけません。
看取りが近づいているとわかっていても、早く元気になってほしい、奇跡が起こってほしいと願い、家族が口にすることもあります。この時、予後が認識できていないと判断するのではなく、今の気持ちを聴くことが大切です。
まずは、家族とコミュニケーションをとります。そのうえで、今後起こりうる状況を事前に説明し、家族がお別れの準備をする支援をしていきます。
終末期に起こりうる変化を事前に伝える
終末期における変化をあらかじめ伝えておくことで、少しは心の準備ができると思います。
- 経口摂取が少なくなる
- 眠る時間が長くなる
- 尿量が減る
- 呼吸が不規則になる
など終末期に予測される変化について看取りに関するパンフレットを用いて説明を行うと良いでしょう。
また、せん妄状態の場合は、薬剤を使って休めるように調整したり、家族の付き添いを依頼することもあります。その際、家族には「つじつまの合わない言動も否定せず、話を合わせるような声かけ」を助言することもあります。
家族に過度な不安を与えない工夫
そして、過度に家族に不安を与えないような配慮も必要です。
これらの変化は、多くの人に現れる終末期の自然な経過であることを伝えます。看取りが近くなっても、音楽をかけるなど本人らしい活動を一緒にする、意思疎通ができる間にたくさん話し伝えたいことを伝えておく、一緒にケアをするなど家族が今できることを伝えます。
本人との思い出を聞いたり、時には全く関係のない世間話をするなど、家族が不安から気を紛らわせられるようなコミュニケーションも心がけます。日常生活を送りながら、家族が本人となるべく穏やかな時間が過ごせるよう支援することが大切です。
最期を迎えると、家族は心にぽっかりと穴があいたような、何をしても埋められない寂しさを味わいます。ともにケアを行い、心の準備をしておくことで、ほんの少しかもしれませんが「つらさ」の緩和につながると感じます。