在宅酸素療法(HOT)における注意点と看護介入のポイント
在宅看護指導士認定試験

在宅酸素療法(HOT)とは
在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy:HOT)は、自宅で酸素吸入を行うことによって低酸素血症を改善し息切れや呼吸苦などの症状を軽減させる治療であり、生命予後の改善やQOLを向上させることが可能です。
適応基準となる疾患と制度
HOTを導入するには、適応となる疾患と制度に基準があります。
適応基準と主な疾患
・動脈血酸素分圧(PaO2)が、55mmHg以下(酸素飽和度が 88%以下)高度な慢性呼吸不全
・60mmHg以下で、睡眠時や運動時に低酸素血症がある
・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
・肺高血圧症
・慢性心不全
・チアノーゼ型先天性心疾患
・群発性頭痛
下記に、HOTの疾患別の療養者数を示します。

制度
- 在宅酸素療法に使用する加湿用の精製水や酸素濃縮器の電気代は自己負担になります。
- 月に1回の定期受診が必要となり、動脈血酸素分圧(PaO2)または経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を測定することが必須です。
- 身体障害者手帳が取得できるため、経済的な援助を受けることが可能です。
- 在宅で使用する機器は医療機関を経由して業者から療養者にレンタルされる仕組みです。
酸素供給装置の種類と特徴
酸素供給装置には、2種類があります。
・酸素濃縮器
・液化酸素装置
療養者が安全かつ簡単に使用できるように日常生活に合った酸素供給装置を選定することが重要です。
下記に、酸素供給装置のそれぞれの特徴を示します。

看護介入時の観察ポイント
病状の管理
- 低酸素血症を引き起こしていないか
動脈血酸素飽和度(SpO2)、脈拍、呼吸困難の程度などを観察しましょう。
- 低栄養になっていないか
呼吸困難は呼吸補助筋を過剰に使うことでエネルギー消費量が多くなり食事を飲み込むことで息苦しさを感じ、食事量が減ることで痩せにつながります。消費・摂取カロリーを把握し、必要に応じて栄養補助食品でエネルギーを補うように指導しましょう。
酸素投与量の管理
- 指示された酸素流量で使用できているか
自己判断で酸素流量を変更していないか、カニューレを外していないかを確認する必要があります。Ⅱ型呼吸不全の患者では、過剰な酸素投与によってCO2ナルコーシスを引き起こす可能性があるため、医師から指示された酸素流量、吸入時間、タイミング、適切な酸素投与器具の使用方法で治療できているかの確認が必要です。
- 酸素マスクのフィッティング不良による皮膚への圧迫が生じやすい鼻や耳上部に発赤、潰瘍などはないか
バッテリー残量の確認
酸素濃縮器は、停電時に備えて使用する酸素流量でのバッテリー駆動時間を確認しておきましょう。また、バッテリーでの運転時間には限りがあるため、酸素ボンベを用意し、取り扱い方法や酸素ボンベの残量を確認しておく必要があります。主治医に酸素の最低吸入量を確認しておくことも重要です。
万が一のときにすぐに、訪問看護ステーションやかかりつけ医、機械や酸素ボンベ業者に相談ができるよう、緊急連絡先を自宅の目のつきやすいところに貼ることや、外出時には酸素ボンベの残量計算表と一緒に携帯しておくことも重要です。
火気トラブル防止のための注意点
HOT患者の火災事故で最も多い原因はタバコが多く、必ず禁煙をするよう指導します。また、機器の周囲2m以内には火気(ストーブ、線香、コンロなど)を置かないこと、酸素吸入しているときには火気に近づかないことを徹底して指導します。
エアコン、電気カーペット、IHコンロなど火を使用しない電化製品を使用することが理想です。
日常生活動線の確認
酸素濃縮器は療養者の生活動線を考慮し、酸素チューブやリモコンが届くかなどを検討して配置しましょう。酸素チューブが20mを超えると、酸素吸入濃度が低下するため長すぎないように指導します。
酸素療法ができていないトラブルの原因
・酸素供給装置の電源が入っていない
・携帯用酸素ボンベの元栓が開いていない
・酸素投与器具(鼻カニューレなど)や延長チューブの接続部が外れたり折れたり捻じれたりしている。
・酸素ボンベが空になっている
まとめ
いかがでしょうか。在宅酸素療法は、患者さんの症状を和らげ、安心した生活を支える大切な治療です。
看護師は日常の変化に早めに気づき、適切な対応や指導を行うことが求められます。日々の観察を大切にし、より良いケアに活かしていきましょう。
参考
- 日本呼吸器学会(編). 喫煙はCOPDの原因ですか?(呼吸に関するQ&A No.29). 日本呼吸器学会. 2014. https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q29.html 最終更新日:2025年8月27日
- 全国在宅医療マネジメント協会 公式テキスト編集部.在宅看護指導士公式テキスト.2023.
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