在宅酸素療法(HOT)における注意点と看護介入のポイント
在宅酸素療法(HOT)におけるトラブル
在宅酸素療法(HOT)は低酸素血症を改善することによって呼吸困難の軽減などの効果があり、QOLの向上につながります。
しかし、自宅での管理が必要な療養者や家族がトラブルを予防し、トラブルが発生した場合でも迅速かつ適切に対応できるように指導を行い、安心した生活を過ごせるよう継続的に支援していくことが必要です。
では、HOTでは主にどのようなトラブルがあるでしょうか。
①酸素投与におけるトラブル
指示された酸素流量が守られていないと低酸素血症による病態の悪化やCO2ナルコーシスを起こして呼吸が停止する可能性があります。
②火気におけるトラブル
酸素は燃焼を助ける性質があるため火傷や火災に注意する必要があります。喫煙は事故の原因として最も多いのは喫煙です
③使用する状況や環境におけるトラブル
地震や停電などの災害時にライフラインが遮断されることを想定して備えておく必要があります。中でも目のつきやすいところに訪問看護ステーションやかかりつけ医、機械や酸素ボンベ業者の緊急連絡先を貼ること、外出時には携帯しておくことが重要です。
また、自宅には一般的に自家発電機がないため白色のコンセント(一般電源)しか設置されておらず、停電時は電源を確保することができません。そのため酸素濃縮器のバッテリー稼働時間やポータブル電源のバッテリー残量を把握しておく必要があります。
しかし、バッテリーのみでは運転時間に限界があるため酸素ボンベの併用を行います。療養者や家族が酸素ボンベを安全に使用するために取り扱いにおける注意点について理解しておきましょう。
酸素ボンベの取り扱いにおける注意点
酸素ボンベを安全に使用するためには保管場所が決められており、取り扱いには注意点があります。
保管場所
- 風通しがよく高温(40℃以下)にならない場所に置き、夏場はエアコンを活用する
- 新しいボンベと使用済みのボンベは区別しておく
(例:使用済みのボンベには『空』の札を吊るす、シールを貼るなど)
- 周囲2m以内に引火性物がないこと
- 転倒を防止する(例:スタンドを使用して固定する)
取り扱いの注意点
- 熱によってボンベ内の圧力が上昇してガスが噴き出す可能性があるため可燃物の近くや、周囲5m以内の火気のあるところでは使用しない
- ボンベのバルブは急激に開閉すると気体が急激に圧縮されることで発火の危険性があるため静かに行う
- バルブなどの破損、ケガを防ぐために転倒しないよう固定し、立てて使用する
- 使用済みのボンベは長期間放置すると腐食して破裂する可能性があるため、速やかに業者に連絡する
看護介入でトラブルを防止するための観察ポイント
①酸素投与における観察ポイント
- 指示された酸素流量、使用時間、タイミング、適切な酸素投与器具の使用方法で治療できているか
- 自己判断で酸素流量の変更をする、入浴時などにカニューレを外していないか
- 酸素投与器具の締めすぎなどによる圧迫により鼻や耳上部に発赤、潰瘍などはないか
②火気における観察ポイント
引火する危険性があるため必ず禁煙するよう指導します。また、機器の周囲2m以内には火気(ストーブなど)を置かないこと、酸素吸入している時は火気に近づかないことを徹底して指導します。
③病状における観察ポイント
日々の病態や身体状況は変わるということを前提に観察することが大切です。日常生活の中での動脈血酸素飽和度(SpO2)、脈拍、呼吸困難感の程度などを観察し、適切な酸素流量であるかを確認します。また、療養者や家族が日々の身体状況を手帳に記録することは自己管理能力の向上につながり、小さな変化に気づくことで症状の悪化を早期に発見できます。
「在宅看護指導士」は、在宅看護・訪問看護の視点に特化した知識とスキルを学び、人・組織・地域を育てる専門資格です。
訪問看護師であれば知っておきたい、緊急性の見極め方から家族支援、訪問看護事業の運営、リスク管理などを包括的に学習します。
訪問看護に魅せられている方、訪問看護に飛び込んでみたい方、管理を任されている方に、おすすめです。