在宅人工呼吸療法(HMV)における訪問看護の役割
在宅人工呼吸療法(HMV)と今後の展望
在宅人工呼吸療法(HMV)とは、呼吸器疾患や神経・筋疾患などによって人工呼吸器での呼吸管理が必要な状態かつ病状が安定した方に対して自宅で人工呼吸器を使用し、呼吸を補助する治療法です。
現在の日本は超高齢社会になり、今後も更に進行していくと考えられます。
そのため、これまでの医療や福祉のあり方では対応できなくなっていくと予想され、在宅医療の充実に向けた取り組みが行われています。
在宅医療を提供するために求められる体制はどんなものでしょうか。
- 入院医療機関と在宅医療に係る機関との協働による退院支援の実施
- 多職種連携による患者や家族の生活を支える観点からの医療の提供
- 緩和ケアの提供
- 家族への支援
- 在宅療養者の病状の急変時における往診や訪問看護の体制及び入院病床の確保
- 住み慣れた自宅や介護施設など、患者が望む場所での看取りの実施
自宅で医療や介護が必要な療養者の増加に伴い、医療・介護・福祉に関わる医療機関と多職種が、安心安全な在宅医療を提供する要になります。
訪問看護師によるセルフマネジメント支援
自宅で命に関わる機械を使って療養する患者さんはもちろん、普段見慣れない機械や光景を目の前にする家族など介護者の不安や恐怖は計り知れず、両者ともに強い精神的ストレスを感じています。
そのため、訪問看護師によって安心して治療が行えるために、セルフマネジメントの継続的な支援が必要です。
セルフマネジメントの支援とはどんなものがあるでしょうか。
導入時の支援
療養者や家族の思いを引き出すようなコミュニケーションを図り、日々の不安を軽減できるよう支援します。
緊急時の対応
病状が悪化した場合や緊急時の対応について十分に話し合い、緊急連絡先を目の付きやすいところに貼ります。
トラブル対策
人工呼吸器のトラブルが発生した場合に備えて蘇生バッグを使用できるよう介護者に指導を行います。また、正確に使用できるか定期的に評価することが重要です。
レスパイトケア
介護者の休息が必要になった場合に備えて、レスパイト入院などを利用できるよう療養環境を整えておくことが大切です。
日々の観察と記録
手帳に観察項目の記録をすることは、療養者や介護者が身体の変化に早く気づくことができるため異常の早期対処、早期受診につながります。
介護技術指導
介護者の目的や必要性などの理解力、技術の習熟度を評価し、焦らずに指導することが大切です。
意思決定支援
意思決定支援は時間経過や心情の変化によって変わることが前提です。何度も話し合いを重ねることで療養者や家族が望む生活ができるように支援します。
訪問看護師による日常管理(呼吸ケア)
呼吸法を習得する
息苦しさを改善するために効果的な呼吸法として口すぼめ呼吸や腹式呼吸があります。
また、呼吸のパターンに合わせた基本動作やADLを指導し、呼吸困難が生じた場合には楽な姿勢を取り、呼吸のリズムが整えられるよう指導します。
排痰法を習得する
体位を変えることによって重力の力で末梢気道から中枢気道に痰を移動させる体位ドレナージや排痰を促す呼吸法(アクティブサイクル呼吸法)について指導します。
環境を整える
日常生活において不自由になっている動作や息苦しくなりやすい動作を把握し、安定した生活が過ごせるように環境を整え、楽に動作できるよう工夫することが大切です。
感染を予防する
換気は1日に数回行うよう指導し、室内の空気を循環させることが大切です。
また、誤嚥性肺炎を予防するために適切な吸引の実施、カフ圧の管理、口腔ケアが重要になります。
「在宅看護指導士」は、在宅看護・訪問看護の視点に特化した知識とスキルを学び、人・組織・地域を育てる専門資格です。
訪問看護師であれば知っておきたい、緊急性の見極め方から家族支援、訪問看護事業の運営、リスク管理などを包括的に学習します。
訪問看護に魅せられている方、訪問看護に飛び込んでみたい方、管理を任されている方に、おすすめです。