糖尿病患者さんの在宅における食事療法
食事の意味と糖尿病の治療における食事療法
皆さんにとっての「食事」とはどんな意味を持つものでしょうか?
「栄養素を取り入れること」でしょうか。
「美味しいものを食べること」や、「満腹になることで幸せを感じること」でしょうか。
あるいは「ストレス発散方法の一つ」でしょうか。それとも「人と食を通じて交流を楽しむ機会」でしょうか。
糖尿病を持つ患者さんにとっては、それらに加えて、食事はさらに非常に重要な意味を持ちます。糖尿病治療での食事は食事療法の意味が強くなり、治療の基本という位置づけとなります。
炭水化物・脂質・タンパク質のバランスも大事ですし、もちろんミネラルやビタミンなども摂取しなければなりません。
たとえば炭水化物が多いと、血糖値の上昇に繋がり、長期にわたる血糖値の上昇は合併症にも関連します。また脂質が多いと、血管へのダメージにも繋がりますし、タンパク質の摂取量が低下すると、筋力低下のリスクにもなります。
このように糖尿病を持つ患者さんにとって、食事はとても重要なものとなります。
食事管理と食事療法は同じ意味?
管理の意味は「ある基準などから外れないよう、全体を統制すること」とあります。
入院中なら食事管理をすることができるかもしれませんが、実際の問題として、在宅で過ごす患者さんへの食事管理は困難だと思います。食事は治療の一環だよ、頑張ろうねという意味でも食事療法という言葉を使う方が良いと思います。
食事療法がうまくできていないとき、血糖値やHbA1cの悪化、低血糖、合併症の進行などが問題となります。
では、食事療法のどのような点に着目すべきでしょうか?
実は、食事に関する患者さんの情報が不足していることが多いのです。
食事療法において、この情報収集が鍵となります。
食事自体に関する観察内容
食事の好み、食べる時間・タイミング、回数、量、食事内容、一緒に食べる人の有無、食事の満足感、食事療法への理解、他の疾患の治療に伴う食欲低下の有無、嗜好など
食事をするための身体機能
むせや誤嚥の有無、口腔内の様子、味覚異常の有無、座位保持の持続時間、消化器官のトラブルの有無、あるいは認知症の進行など
金銭面の問題
金銭面の問題があり購入できる食材に偏りがあるなど
これらに加えて、在宅訪問を受けている利用者さんやご家族がどこまで実行することができる力があるのか、把握する必要があります。
在宅で無理なくできる糖尿病の食事療法とは
食事療法の理想は、「バランスよく必要な量を摂取できる」です。
これを問題なく実行できれば良いのですが、そうでない場合があります。
身体側面・認知力・精神側面・金銭面を含めた社会的側面によっては、理想的な食事療法が難しいときもあります。食事療法が困難なときほど、理想的な食事療法を押し付けると、かえってうまくいきません。
在宅で行う食事療法のコツを挙げるとすると
- ①糖尿病の食事療法を正しく理解する
- ②チームで利用者さんがどこまで実行できるのかを検討する
- ③利用者さんに何か変化があれば食事療法を含めた治療方針を適宜修正する
ということが無理なく行える食事療法となります。
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