誤嚥を予防しよう|誤嚥性肺炎を防ぐための姿勢や食事について
誤嚥は、高齢者や嚥下機能が低下している方にとっては身近にあるリスクです。窒息や誤嚥性肺炎を予防するために、正しい知識を身につけておきましょう。
本記事では、誤嚥予防のための食事、姿勢、リハビリまでわかりやすく解説しています。
誤嚥が起こる原因とは
誤嚥は、本来、食べ物や唾液などが通る食道ではなく気管に入り込むことで起こります。のどの感覚や飲み込む力が弱まると、せき反射(咳嗽反射)が十分に働かず、食べ物が気道へ流れ込みやすくなります。むせ込みを伴う顕性誤嚥のほか、気付かれずに進行し肺炎を招く不顕性誤嚥もあります。特に高齢者や脳卒中後遺症では、嚥下機能が低下しやすく、加齢による筋力低下や覚醒が不十分な飲食も誤嚥を助長する要因となります。
誤嚥を予防するためには
誤嚥を予防するためには、嚥下機能を維持する運動や体操のほか、食事場面や口腔ケアにおいて、介助者のケアの方法や配慮が非常に大切です。
食事形態
食事場面では、介助者のケアによって誤嚥のリスクを減らすことが可能です。
飲み込みやすい食品や形態にする
以下の表は、誤嚥しやすい食品を示したものです。

これらの食品に気を付けながら、できるだけ柔らかく飲み込みやすいものを選んで食べる必要があります。
こちらは、日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021で示されている『学会分類2021(食事)早見表』です。

『日摂食嚥下リハ会誌25(2):135-149, 2021』 または 日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ:
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf
表を自社で改変。表の理解にあたっては『学会分類2021(食事)早見表』を必ずご参照ください。
例えば、患者さんが在宅や施設に入所するにあたり、「入院中はコード2の食事を全介助で全摂取していた」という情報があれば、退院後もその食形態と介助方法を継続することができます。
ただし、食事を楽しんでもらうためには、その人の食の好みを最大限配慮することが重要です。
飲み物にはとろみをつける
さらさらした液体は誤嚥につながる原因のひとつです。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会では、とろみ付き液体を、薄いとろみ、中間とろみ、濃いとろみの3段階に分けて表示しています。

『日摂食嚥下リハ会誌 25(2):135–149, 2021』または 日本摂食嚥下リハ学会HPホームページ:
https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf
表を自社で改変。表の理解にあたっては『学会分類2021(とろみ)早見表』を必ずご参照ください。
誤嚥を防ぐためにも、普段のお茶や水だけでなく、みそ汁やスープにもとろみをつけることが推奨されています。
食事中の姿勢
食事中の姿勢によって嚥下のしやすさが大きく左右されるため、その人の嚥下機能、身体機能に合わせた姿勢で食事を摂ることが重要です。
椅子座位

ここがポイント!
・背は90度
・頸部は後屈しないように
・テーブルの高さは肘を乗せて、肘が90度に曲がる程度
・膝が90度程度に曲がるように、必要に応じて足置きで調整
・身体とテーブルは握りこぶし一個分の隙間を確保
ベッド上での食事姿勢

ここがポイント!
・ベッド角度を30°以上に設定
・頸部が前屈位となるように、枕やクッションで調整。顎から鎖骨までの距離が4横指になるように
・下へのズレ防止のため、膝下をギャッジアップするか、クッションを使用。必要に応じて足底にもクッションを入れる
自力での食事摂取が可能であれば、ベッド角度を60度以上に設定しましょう。
食事介助のポイント
・ゆっくり食べる
・一口量を多くしすぎない
・よく噛んで食べる
・水分摂取を挟む
・ながら食べ(テレビを見ながらなど)はやめ、食事に集中してもらう
・咀嚼中に話しかけない
・ご本人の嗜好に配慮する
口腔内を清潔に保つ
口腔内を清潔に保つことも、食物残渣や口腔内の細菌を減らすことができるため、誤嚥性肺炎の予防に繋がります。
ここでは、自力で歯磨きやうがいが困難な方を例に、口腔ケアの手順を解説します。
口腔ケアの手順
①口の周りの清拭
②口腔内の食物残渣・痰の除去
まずはスポンジブラシまたは吸引にて、可能な限り食物残渣と痰を除去しましょう。その後、歯間ブラシやフロスを用いて歯磨きを行います。この際、こびりついた食物や痰などの付着物を無理に剝がそうとすると、出血したり痛みを伴うことがあります。スポンジブラシを用いて口腔内全体を保湿し、付着物を柔らかくしたのち、水で湿らした不織布を歯ブラシに巻き付けて除去すると、粘膜を傷つけずに除去しやすくなります。
③口腔内の清拭
きれいなスポンジブラシを用いて口腔全体を清拭します。
④保湿
保湿剤を口腔全体に塗布しておきましょう。口腔内乾燥予防目的でアズノール®軟膏0.033%を口腔内に塗布されている症例を目にしますが、アズノール®軟膏0.033%に含まれる保湿成分は、皮膚面に対しての保湿効果はあるものの口腔内に対しての保湿効果は期待できません。必ず、その人に適した口腔用の保湿剤はなにか、薬剤師に相談すると良いでしょう。
嚥下機能を維持するための運動
嚥下機能を維持・向上する目的は、運動に即効性はないものの継続することはとても大切です。
嚥下体操には、「パタカラ体操」と「あいうべ体操」がよく用いられます。
食前に行うことを習慣にして、継続して実践しましょう。
パタカラ体操
「パッ、タッ、カッ、ラッ」と発声し、口周りと舌の強化を図る体操です。
・「パ」:上下の唇を破裂させるように発音し、唇を開閉する力を強化することで吸う・飲む力の向上を図ります。
・「タ」:舌を上あごにくっつけながら発音し、舌先を強化することで食物を押しつぶす力の向上を図ります。
・「カ」:舌を喉の奥にくっつけながら発音し、喉の奥を強化することで飲み込む力の向上を図ります。
・「ラ」:舌をしっかり巻き舌にしながら発音し、舌の筋肉を強化することで食物を丸める力の向上を図ります。
「パッ、タッ、カッ、ラッ」と1回ずつ言ったり、「パッ、パッ、パッ、」と一音を繰り返すのも良いでしょう。
あいうべ体操
パタカラ体操と同様に、口周りと舌の強化を図ります。
・「あー」:口を大きく開けます。
・「いー」:口を大きく横に開きます。
・「うー」:目一杯口をすぼめます。
・「べー」:目一杯舌を出します。
「あー」「いー」「うー」「べー」を大きな声で発声することがポイントです。
まとめ
いかがだったでしょうか。誤嚥を防ぐためには、食事形態の工夫や正しい姿勢、口腔ケア、嚥下体操の継続が欠かせません。日常の小さな配慮が肺炎予防や安全な食生活につながります。ここでの学びを、ぜひ明日からのケアに活かしていきましょう。
参考
1)埼玉県医師会(編). リーフレット「誤嚥性肺炎予防のための食事姿勢と口腔健康管理」. 埼玉県医師会; 発行年不明. (最終アクセス日:2025年10月2日)
2)健康ひょうご21県民運動推進会議(編). 新生活習慣!食前の『パタカラ体操』. 健康ひょうご21県民運動ポータルサイト; 公開日不明. (最終アクセス日:2025年10月2日)
3)京都市立病院(編). 摂食嚥下障害に関する資料(PDF). 京都市立病院; 発行年不明. (最終アクセス日:2025年10月2日)
4)日医工株式会社(編). ケア・対処・訓練法 Q16 高齢者や軽度な嚥下障害のある方への食事方法のポイントは? 日医工株式会社; 公開日不明. (最終アクセス日:2025年10月2日)
5)公益財団法人長寿科学振興財団(編). 第5章 口腔ケア 2. 誤嚥リスクがある高齢者への安全な口腔ケア「水を使わない口腔ケア」. 公益財団法人長寿科学振興財団; 平成31年. (最終アクセス日:2025年10月2日)
6)日本摂食嚥下リハビリテーション学会 嚥下調整食分類2021委員会(編). 嚥下調整食分類2021 マニュアル. 日本摂食嚥下リハビリテーション学会; 2021. (最終アクセス日:2025年10月2日)
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