ハードルが高い?在宅医との連携

在宅医との連携の必要性
訪問看護師は在宅療養における多職種連携の要です。多職種連携の中でも、訪問看護師にとって避けては通れないのが「在宅医との連携」です。
訪問看護指示書は病院の医師から、クリニックの医師から、あらゆる医療機関から発行されます。その中で訪問看護師間との連携をもっとも密に求めるのが在宅医だと思います。
在宅医が訪問している患者さんには病状が不安定な方、自宅でのお看取りを希望されている方が多くいらっしゃいます。訪問看護師と在宅医の連携がスムーズにできることで患者さんやご家族は安心して自宅で過ごすことができます。
今回は在宅医との連携のコツをお話しします。
1.実は在宅医への連絡のハードルは高くない
訪問看護師から医師へ連絡することは心理的にハードルが高いと感じている方が多いと思います。特に在宅では、様々な医療機関の医師へ連絡することになります。「できれば電話したくない」「連絡するのは緊張する」と思っている方がほとんどではないでしょうか。

しかし、在宅医へ連絡をすることは決してハードルが高いものではないのです。なぜなら、訪問診療を行っている医療機関では、直接医師が対応することはほぼないからです。基本的には相談員や同行看護師、事務といった医師以外の職種が電話対応を行っています。
たとえば、訪問看護師からの電話を受けて、医師に確認が必要な場合は「確認してから折り返し」といった対応をします。電話を看護師達が受けて、そのまま医師へ電話をパス!ということはありません。間に相談員や同行看護師がはいって医師との調整をしていますので、気負わずに連絡しましょう。気軽に連絡してもらえる方が在宅医側からするとありがたいのです。
2.こんなことで連絡してよいのか…と迷ったら
連絡のハードルは高くないと言われても、「こんなことで連絡していいのかわからない」「連絡すべきかどうか判断に迷う」というときがあると思いますが、平日診療時間内のオーバートリアージは恐れなくて大丈夫です。
どの在宅医でも夜間・休日よりも平日の診療時間内の方が圧倒的に対応しやすいものです。気になることがあったら、診療時間内であれば迷わずに連絡しましょう。結果的にオーバートリアージになっても問題ありません。医師に連絡するのを躊躇して、患者さんに不利益があるのが一番よくないことです。
3.在宅医への連絡で注意が必要なタイミング
在宅医へ連絡するときに注意することが必要なタイミングは夜間と週末(特に金曜日)です。
夜間は「緊急性の有無」「患者さん・ご家族の心配度」を確認した上での連絡が望ましいです。翌朝まで経過観察できるかどうかの判断をしてから、必要時は連絡しましょう。
在宅医は土日に入る前に対応しておきたいと考えるので早めの連絡が望ましいです。在宅で対応するにせよ、受診するにせよ、平日の日中にどれだけ対応し、週末を迎えるかが重要になります。特に金曜日は経過観察のままで、報告が遅れてしまい、夕方や夜間の連絡にならないように心がけましょう。
4.ICT連携ツールを活用しよう
ここまでは主に異常時の連絡についてのお話をしてきましたが、在宅医との連携は異常時だけでなく平常時から行うことも重要です。異常がない場合の報告ツールとして、訪問看護師が主治医に月1回提出する訪問看護報告書が主に用いられています。
一方で、退院直後や特別訪問看護指示書の期間中といった場合「安定して過ごせている」という情報がタイムリーに必要なときもあります。しかし、「変わりなく過ごせています」という情報をわざわざ電話で伝えるべきかを悩む方も多いと思います。
そこで活躍するのがICT連携ツールです。

ICT連携ツールとは、データ通信を利用した情報共有やオンライン診療を行うためのパソコンやスマートフォンなどのアプリを指します。近年、ICT連携ツールが在宅医療で使われることが増えてきました。
2024年度の診療報酬改定では、ICT連携ツールを用いての連携に対して在宅医療情報連携加算(100点)、在宅がん患者緊急時医療情報連携指導料(200点)が新設されました。今後ますますICT連携ツールが広く活用されるようになるでしょう。
状態が安定しているときの定期訪問の報告や急ぎでない依頼(物品補充など)についてはICT連携ツールを積極的に活用しましょう。在宅医の定期訪問日を訪問看護師が把握して、訪問日前に定期的な状態報告することでスムーズに訪問診療ができます。
ICT連携ツールでの報告に向いている内容
日々の業務の中でも下記のような報告事項はICT連携ツールの活用が便利です。
・在宅医の訪問前の状態報告
・次回診察時の対応でよい相談事
・定期薬の内服状況、内服忘れや残数
・頓服薬の使用状況、残数の確認
・医療材料の残数報告や補充依頼
ただし、緊急性がある場合や当日中に対応が必要な内容については、直接電話をするか、または事前にICT連携ツールで詳細を報告した上で電話をするなどの対応をしましょう。
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