2024.02.15

清潔援助を在宅看護で行う際の工夫

 

在宅看護指導士の認定試験について

 

在宅療養では清潔保持がおろそかになりがち

体調が悪いときや気分がすぐれないときなど「今日はしんどいからお風呂に入らないで寝よう」とか、そういったことが人生で何度かあると思います。

人は食べたり寝たりしないと1か月やそこらで死んでしまいますが、お風呂は半年間入らなくてもそう簡単に死んでしまうことはありません。

部屋の片付けなどにも同様のことが言えます。

まして、在宅療養中でしかも独居であると清潔保持はどうしても後回しにされてしまいます。

病気で身体もしんどくて、生きて食いつなぐのが精いっぱいなためになかなか身繕いまで手が回りません。

しかし、皮膚を清潔にすることは単に皮膚の機能低下予防、感染対策や臭いへの対処だけではありません。

それは人に爽快感と安心と安らぎをもたらします。

そしてナイチンゲールも「看護覚え書」の中で述べているように、『その解放感や安らぎは、生命力を圧迫していた何ものかが取り除かれて生命力が解き放たれた、まさにその徴候のひとつ』なのです。

在宅看護ならではの清潔援助の工夫

訪問看護師が行う重要なケアのひとつに清潔保持への援助があります。

在宅看護では、療養者の自宅環境や設備が異なるため、清潔ケアにおける工夫が必要です。

今回は主に床上の清潔ケアの工夫をいくつか挙げます。

家庭環境に合った用具の選択

患者や家族が使い慣れた清拭用品を選び、在宅での使用に適したものを提供します。

床上で洗髪を希望された方に対してはケリーパッドの変わりに新聞とタオル、45リットルのゴミ袋を用いてその場で作ったこともあります。

即席ケリーパッドはWebの検索をすればいろいろと出てきます。

500mlサイズのペットボトルの蓋に穴を開けて洗浄ボトルにするのは良く知られていますが、もっと大きなペットボトルは洗髪の時に便利です。

市販のマヨネーズボトルも便利です。

蒸しタオルやホットパックは電子レンジに絞ったタオルを入れて作ります。

足浴で温めながら、肩に蒸しタオルでホットパックすることで、入浴ができなくてもかなり身体が温まり爽快感を得ることができます。

身体特性や状態に合わせた清拭頻度の調整

例えば、排泄の問題を抱える療養者は、より頻繁な清潔ケアが必要です。

尿道バルンカテーテルの留置がある場合は毎日陰部洗浄をすることが必要です。

家族や介護者への清拭技術の指導

家族や介護者に、適切な清潔保持の方法や衛生手順を指導し、積極的に参加していただきます。

清拭用品の配置場所の工夫

清拭用品を療養者や援助者がわかりやすい範囲に置き、物品の位置を申し送りノートなどで伝えます。

療養者の移動や体位変換を最小限に

体位変換や移動を少なくすることで、清拭の際の負担やリスクを減らします。

二人でケアが必要なら、主治医にお願いして訪問看護指示書に二人介助が必要であることを明記してもらうことで、複数名の算定も可能です。

 

これらの工夫を実践することで、在宅看護における清潔ケアをより効果的かつ安全に行うことができます。

プラスの気遣いでより良い清潔援助を

療養者が男性なら髭そりに加えて、長く伸びた眉毛を少し整えてあげることもあります。

女性なら化粧水等を希望されるかお聞きして、お化粧を勧めることもあります。

病院は治療を目的とする場所なのですが、在宅療養は療養者さんお一人お一人の生活そのものです。

更衣もお気に入りの服を探し、ケアと更衣の後に鏡を見てもらうなど、何かしらのプラスワンがあれば良いと思っています。

爽快感も口に出して言ってもらい、援助者が共感をすることで笑顔があふれ会話も弾みます。

私たちの援助の最終目的は清潔を保つことや爽快感を得るだけでなく、その人の生活の質を上げて生命力の消耗を最小限にすることなのです。

 


 

「在宅看護指導士」は、在宅看護・訪問看護の視点に特化した知識とスキルを学び、人・組織・地域を育てる専門資格です。

訪問看護師であれば知っておきたい、緊急性の見極め方から家族支援、訪問看護事業の運営、リスク管理などを包括的に学習します。

訪問看護に魅せられている方、訪問看護に飛び込んでみたい方、管理を任されている方に、おすすめです。

 

在宅看護指導士の認定試験について